[新旧選手会長対談]大野和成 舘幸希 ゴール前での執着心

湘南ベルマーレ 大野和成 舘幸希
プロフィール

大野和成 Ohno Kazunari #8 DF 1989年8月4日生まれ、新潟県上越市出身。サッカー歴:FC高志→上越市立春日中学校→アルビレックス新潟ユース→アルビレックス新潟→愛媛FC→湘南ベルマーレ→アルビレックス新潟→湘南ベルマーレ

舘幸希 Tachi Koki #4 DF 1997年12月14日生まれ、三重県鈴鹿市出身。サッカー歴:鈴西サッカースポーツ少年団→伊賀FCジュニアユース→三重県立四日市中央工業高校→日本大学→湘南ベルマーレ ※2019年 JFA・Jリーグ特別指定選手(湘南ベルマーレ)

取材・文=大西 徹 Text by Onishi Toru
写真=兼子愼一郎、フォトレイド Photography by Kaneko Shin-ichiro, Photoraid
取材日=2023年8月8日

目次

「自分が好きなようにやればいい」(大野)

湘南ベルマーレ 大野和成

――今日は新旧選手会長対談です。大野選手は昨シーズンまで選手会長を務めていました。

大野 俺は続けたかったんですけど、舘がめっちゃやりたいって言うから譲りました。

 違う、違う、違う(笑)。(坂本)紘司さんから「カズが辞めるって言ってるけど」みたいに言われて。

大野 今年もやりたいって言ったんだけど。

 全然違うやろ(笑)。

大野 そろそろいいかなと思って。舘は副会長で、俺の補佐だったので。

――2020年から3年間、選手会長として主にどんなことをしていましたか?

大野 まず他のチームより仕事が多いですね。

 違いますね、それは(笑)。カズくんがいろいろやっていただけです。

大野 俺の仕事がやたらと多かったんだよね。選手会長ってほんとはあまり仕事がないはずなんだけど、俺のときはムダに多くて。でも、舘になってから落ち着いたね。

 カズくんがやりたがりだったから。

大野 選手会長の仕事といえば、日本プロサッカー選手会では湘南の代表みたいな立場です。

 最近は選手会の総会に参加しました。対面でもよかったんですけど、たまたま試合日の関係でオンラインでの参加でした。

大野 あとはチームの規律みたいなものを舘が決めています。

 誰かが忘れ物とかをしたときの規律をカズくんから引き継ぎました。

――大野選手から見て舘選手会長の働きぶりは?

大野 俺のときよりもいいです。自分はちっぽけだったなって思います。

 やめて(笑)。

大野 選手会長は自分らしくやればいいんですよ。選手総会に参加して、あとは自分が好きなようにやればよくて、必要ないと思ったことはやらなくていいし。

 カズくんは盛り上げていたから。

大野 やりすぎたね。

 あれが選手会長のあるべき姿みたいになっていて、俺が面白いことをやらないといけないので、ちょっとつらいです。

大野 舘の色を出せばいいんだよ。だから、このままでいいです。

「デビュー戦だったから」(舘)

湘南ベルマーレ 舘幸希

――二人が最初に知り合ったのは舘選手がベルマーレに入ったときですか?

 2019年に練習生として来たときです。

大野 なんか覚えてるな。真ん中やってた?

 真ん中やっていました。

大野 無口で黙々とボールをさばいていたと思う。

 さばいていました?(笑)

――最初の試合は2020シーズンのルヴァンカップ開幕戦でした。

大野 舘がアンカーやったときか?

 違う違う、サイドボランチね。

大野 (公式記録を見る)

大野 これは覚えてる。あまり練習でやってなくて、ぶっつけ本番に近かった。

 未月(齊藤未月、現神戸)が風邪を引いたんですよ。

大野 俺も試合に出る感じではなかったんだけど、当日に出ることを知らされたんだった。それはめっちゃ覚えてる。あと、舘にパスを出したら全部バックパスで返ってきてた。

 ハハハ。

大野 全然前を向かない。テンパってたから(笑)。

 デビュー戦だったから。

大野 え、デビュー戦? 初陣っていうこと? 勝ってよかった。

「身長のわりに身体能力が高い」(大野)

湘南ベルマーレ 大野和成

――今年1月の鹿児島キャンプでは、大野選手がYouTubeの自撮り企画で、「今年の舘は髪色を変えて、人間性を変えて、自覚している」と紹介していました。

大野 最近は毛先を遊ばせています。

 やめて(笑)。

大野 1年目よりは自信を持ってプレーしています。あの頃の舘の自信のなさはアリンコでした。今年は「俺が絶対的なディフェンスリーダーだ!」みたいな感じですね。

――二人が一緒に出場する機会も増えています。

 わりと一緒に出ています。カズくんは試合前に「もう無理だ!」とか「疲れた!」とか言ってるんですけど、試合になったら誰よりも動けるおじさんという感じですね。

大野 誰がおじさん(笑)。ギリギリですね。しっかり現実を受け止めて、もうやるしかないです。自分が30歳を超えたといまだに思ってないけど。

――つい最近34歳になりました。

大野 見えないでしょ?

 見えない。

大野 舘がおじさんって言うから、俺は年を取ったんだってめっちゃ自覚して現実に帰っています。

 34歳っておじさんなんですかね?

大野 世間的にはおじさんではないけど、サッカー界ではベテランと言われる年齢だよね。

――お互いのプレーをいつも間近で見て、どんなふうに感じていますか?

 カズくんは、守備は全部強いです。地上戦も強いし、空中戦も強いし、抜かれないですし、カバーリングがめっちゃ速い。

大野 舘はヘディングが強い。すごく飛んでるなと思う。あとはロングボールが来たときの胸トラップもいい。最近はボールを持ったときに一人ではがして抜いていくよね。身長のわりに身体能力が高い。

 身体能力が高くないとできないですよね。

大野 確かに間違いない。あのポジションってけっこう動く量が多いから。

 足が速くないとできない。

大野 普通のチームの3バックよりもプレーエリアが広いよね。

「やられる気がしなかったです」(舘)

湘南ベルマーレ 舘幸希

――J1第22節広島戦で約4カ月ぶりのリーグ戦勝利を挙げました。

 安心した、という感じでした。

大野 やっと勝ったなと。失点もなかったし。

 DFとしては無失点で勝てたのはうれしかったです。

――無失点にできた要因はどのように感じていますか?

大野 ゴール前の守備でボールへの執着心があったことかな。

 ありました。

大野 やばいと思っても誰かがカバーに行ってくれて、攻め込まれていてもやられる気がしなかった。見ている人は危ないと感じている場面でも、人数はそろっていてボールにも行けているし、それは天皇杯(ラウンド16 C大阪戦)も同じでした。

 やられる気がしなかったです。

大野 シュートを打たれても誰かが寄せているから。良くないときは、誰もボールに行かなかったり、人はいるけどシュートを入れられたりすることが多かったけど。

――新加入のキムミンテ選手が3バックの真ん中でした。

大野 御前崎キャンプの練習試合では一緒に組んでいないから、(その広島戦が)実質初めてでした。

 練習の一コマぐらい。俺は紅白戦とかでは一緒に組んだけど、練習試合では組んでないです。

大野 普通の練習ではちょいちょい組んだけどね。

――実際に試合で組んでみて、どう感じましたか?

大野 デカくてどっしりしている。

 どっしりしていて、安定感があるし、ミスがない。

大野 だから自信を持って前に行ける。ミンテが入ってもチームとしてやることは変わらないし、広島戦はやってやると思っていました。

「もっと細かくやっていかないと」(大野)

――個人としての課題はどのように感じていますか?

 攻撃のところですね。守備に関しては、チームとして広島戦のような守り方ができて、ゴール前で体を張っていけば、自ずと強固なものができていくと思っています。その中で、ビルドアップのところからもうちょっと安定感を出していければ、もっと自分たちが主導権を握って、攻撃で厚みを出せるようになると思います。

――試合後に畑(大雅)選手が、小野瀬(康介)選手とローテーションをしながら舘選手のパスを引き出したいと話していました。

 自分が見ることも、周りとの関係も大事です。どこでスピードを上げるのか、一回(パスを)つけるのかという判断も大事です。近い選手との関係性を深めて、自分がもっとこうしてくれ、ああしてくれと要求することも大事だと思います。

――左サイドは杉岡(大暉)選手や山田(直輝)選手と一緒に出ることが多いですね。

大野 俺と舘のところはけっこう時間があって、いいところを選べたときはいい攻撃につながるので、それはもっとやらないといけないと思っています。広島戦では失点にはつながっていないけどスライドするときにあまり良くないシーンもあったので、もっともっと細かくやっていかないといけないと感じています。

――細かくスライドすることが大事なんですね。

大野 そうですね。次を予測して動くことは大事です。ただ、難しいので予測をミスるときもあります。

 ありますね。

大野 次はこっちに来るだろうと思ってポジションを取ろうとしたときに、そっちか、やばい、みたいな。

――公開日に練習を見ていると、ボールの状況を見るようにというコーチングスタッフの声が聞こえてきます。

 準備のところはめっちゃ言われます。ボール状況によって変えないといけないし、相手ありきなので、予測のところはとても大事です。

――これから順位を上げていくために大事なことは。

大野 すべてです。勝たないと上には行けないので、ゴール前で体を張らないといけないですし、相手にそこまで行かせない過程も大事だと思います。

 いくらいいプレーをしても、ビルドアップで調子が良くても、勝たないと意味がないです。

大野 後ろの選手は攻撃陣みたいに目立たなくてもいいから勝てればいいです。

――広島戦で勝って、サポーターの表情を見て感じたことは?

大野 勝つっていいなって。

 久しぶりだったので、ほんと良かったです。やっぱり試合を終えて笑えるのはいいですね。

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