対談 日下部諒 猪狩佑貴 選手たちに力を[9.24湘南国立]
湘南ベルマーレユース時代の同期で、現在は株式会社湘南ベルマーレに在籍。二人は通常業務と並行して「Jリーグ加盟30周年プロジェクト」も担当している。国立競技場で開催するホームゲームに込めた思いを聞いた。
日下部諒 Kusakabe Ryo 株式会社湘南ベルマーレ toC事業部 部長。サッカー歴:あざみ野FC→CYD FC→湘南ベルマーレユース→順天堂大学サッカー部。大学卒業後、伊藤ハム株式会社勤務を経て、株式会社湘南ベルマーレに入社。
猪狩佑貴 Igari Yuki 株式会社湘南ベルマーレ 第二営業部。サッカー歴:FC金目→湘南ベルマーレジュニアユース→湘南ベルマーレユース→湘南ベルマーレ→佐川印刷SC→湘南ベルマーレ→福島ユナイテッドFC。現役引退後、株式会社湘南ベルマーレに入社。
取材・文・写真=大西 徹 Text and photography by Onishi Toru
「チャレンジしたいという思いはどこかに秘めていた」(日下部)
――国立開催に向けたプロジェクトが始まったのはいつですか?
日下部 去年の春頃に始まって、開催が決まったのは去年の冬です。
猪狩 「Jリーグ加盟30周年プロジェクトを担当したい人はいるか?」と社内で話が上がり、僕たちは手を挙げた5人のうちの2人です。
日下部 2018年に創立50周年を迎えたときにクラブの歴史を振り返ったので、内容がかぶってしまうね、みたいなところから話が始まりました。今回は過去も振り返りつつ、次の30年を皆さんに期待していただけるような企画を中心にできたらいいよね、という話を最初にしたのを覚えています。
――その頃から1年以上がたって、試合まであとわずかとなりました。
猪狩 JAM Projectさんに応援ソングを作っていただいたのも、新しいオフィシャルチームバスができたのも、30周年プロジェクトの一つです。その中でもプロジェクトの一大イベントとして国立開催を捉えています。
――お二人の役割分担は?
日下部 私は主に集客を担当していて、猪狩は営業のほうを担当しています。
猪狩 実は去年、30周年で何をやろうかと話していたときに、ホームタウン9市11町とのつながりに着目しました。クラブが存続の危機を迎えたとき、地域の方たちの大きなサポートのおかげで乗り越えることができた経緯があるからです。そんな中、地域とのつながりがもっと見えるように、誰が言い始めたか忘れてしまいましたが、駅伝をやろうと一時期かなり盛り上がりました。みんなでホームタウン全エリアを走って、市役所や町役場を回りながらタスキをつないでいこうと考えました。
日下部 各市町の役所の方にもご参加いただいたり、選手やスタッフも走れたらいいねと。その一方で、去年からJリーグの他のクラブが国立でのホームゲーム開催を始めている中で、僕らもチャレンジしたいという思いはどこかに秘めていたけど、初めはちょっとハードルが高いなと感じていました。
猪狩 その頃はまだ現実的ではなかった。
日下部 そう。アイデアが出たときにみんなが、よしチャレンジしようぜ、とはなれなかった。それは僕も猪狩も。でもあるとき、社内で「国立開催をベルマーレが成功させたら、すごいことじゃない?」「チャレンジする価値はあるんじゃない?」とアドバイスをもらったんです。ちょうど今『やれんのか?』というキーワードもメッセージに込めていますが、そのとき本当にやれるのか検討を始めました。
猪狩 ベルマーレ平塚時代に国立で開催したときの4万8640人という最多記録をあらためて見て、30周年の節目に国立で試合をする意味はあるんじゃないかと考えました。
「クラブとしての経験値も上がっていく」(猪狩)
――国立で他クラブの試合をご覧になって、どう感じましたか?
猪狩 FC東京vs川崎フロンターレ(5月12日)は5万6000人を超えていて、やっぱりすごいなと思いました。プレーしている選手たちや試合を運営しているフロントスタッフが経験を積めば積むほど、クラブとしての経験値も上がっていくんだと思います。そういう意味でも、9月24日はベルマーレの選手たちに躍動してほしいですし、僕たちクラブスタッフも集客や営業を最後まで頑張って、日本最大級のスタジアムで試合を成功させたいです。
日下部 現在湘南のことを応援いただいている方はもちろん、ホームタウンに住む子どもたちやご家族、今までお世話になった方々、関心がまだあまりない方々にもベルマーレの魅力を感じてもらえる日になるといいなと思っています。
――試合以外で個人的に楽しみにしているイベントは?
日下部 やっぱり湘南乃風のライブです。メンバー4人がそろって国立でライブをして、最高潮の雰囲気で選手入場を迎えたときに、どういう光景が生まれるのか今から楽しみです。
猪狩 湘南乃風のファンの皆さんにもぜひ来ていただきたいですね。
――そういえば猪狩さんは今日、30周年記念ユニフォームを着ていますね。
猪狩 僕が生まれて初めて買ったJリーグのユニフォームがこのデザインだったんです。背番号10・ベッチーニョのユニフォームが今でも実家にあります。このユニフォームは胸アツですね。
日下部 お父さんに買ってもらったの?
猪狩 買ってもらって、大事に着てた。そのユニフォームは特別なときに着る一張羅だったから。その頃は少年団でサッカーをしていて、スタジアムのゴール裏に親父と行ってました。一番前のフェンスにちょこんと座って試合を見ていたのを覚えています。
「『夢づくり 人づくり』のきっかけになるように」(日下部)
――開催に向けた準備も大詰めですね。
猪狩 いつもはレモンガススタジアムという慣れたところで試合をしていて、どこに何があってどうすればいいか全部把握しています。でも、今回の国立開催はゼロからつくっているので、準備がこんなに大変なんだってつくづく思っています。
――猪狩さんが担当している営業は、通常とはどう異なりますか?
猪狩 国立開催に特化したセールスをしています。部屋を使えるコースやVIP席がついているコースを既存のオフィシャルクラブパートナーの皆さんにご案内しました。パートナーの皆さんはいつも親身になって考えてくださるなとあらためて感じています。だからこそ当日は選手と一緒で、自分も最高のパフォーマンスを発揮したいです。スタジアムで気持ち良く過ごしていただけるように、自分が持っている最大限のものを出しきりたいです。
――日下部さんは集客を担当する中で、どんな光景を思い描いていますか?
日下部 歴代最多の4万8640人以上の方々にお越しいただく光景です。そこで、たくさんのホームタウンの子どもたちがご家族や友達と一緒にベルマーレの試合を通して心を揺さぶられるような体験をしてほしいなと思っています。湘南ベルマーレのミッションにもある「夢づくり 人づくり」のきっかけになるような一日にしたいです。
――当日はたくさんの子どもたちが来場しそうですね。
日下部 そうですね。ホームタウン在住の高校生以下の子どもたち1万名を無料でご招待する「こどもゆめチケット」には1万名以上のご応募をいただいて、抽選になるほどの大きな反響をいただきました。
――最後にファン・サポーターへのメッセージをお願いします。
日下部 いろんな人たちの汗と涙と思いが積み重なって、ベルマーレはJリーグ加盟30周年を迎えることができたと思うので、今回の国立開催はクラブの価値を示す一つの場所だと思っています。スタジアムの空気感や選手の躍動感を感じ取っていただけたらうれしいです。
猪狩 30周年の節目に僕たちは気持ちを込めて準備をしています。選手たちに力を与えて背中を後押しするような雰囲気を、ベルマーレファミリーみんなでつくりたいです。■
2023明治安田生命J1リーグ 第28節
2023年9月24日(日)16:00 国立競技場
湘南ベルマーレ vs 川崎フロンターレ